歯の表面を削って白くしているのではないか。薬剤で溶かしているのではないか。仕組みが分からないまま口の中に薬剤を入れることに、抵抗を感じる方は少なくありません。
実際に起きているのは、歯の中にある着色のもとを化学的に分解することと、表面の光の反射が変わることの2つです。どちらも歯を削る操作ではありません。そしてこの2つの仕組みが分かると、なぜ人によって届く白さが違うのかも見えてきます。順に見ていきましょう。
歯の中で起きていることは2つある
着色のもとを分解する
歯の色は、エナメル質の内側にある象牙質の色と、長い時間をかけて内部に取り込まれた色素によって決まります。コーヒーやワインの色素は表面に付くだけでなく、細かな構造の内側にも入り込んでいきます。
薬剤の主成分である過酸化水素は、歯の表面から内部へ浸透していく過程で分解し、反応性の高い物質(フリーラジカル)を生じます。これが色素の分子と反応し、色のもとになっている構造を切り離します。色素そのものが無色に近い状態へ変わるわけです。
歯を削って表面を落としているのではなく、内部に残った色を化学的に分解している。ここが、研磨で着色を落とす清掃との決定的な違いです。
光の反射を変える
もう1つの作用は、見え方の変化です。薬剤の反応で発生した酸素の働きにより、エナメル質の表層で微細な構造が変化します。すると光が当たったときの反射が変わり、内側の象牙質の色が透けにくくなります。
すりガラスを思い浮かべると分かりやすいかもしれません。透明なガラスは向こう側が透けますが、表面が細かく荒れたガラスは光を散らして向こう側を隠します。同じことがエナメル質の表層で起きていると考えてください。
なお、この作用はエナメル質の厚みを減らすものではありません。薬剤が歯におよぼす影響についてはホワイトニングで歯がもろくなる?で詳しく整理しています。
使う薬剤で「速さ」が変わる
歯科医院で扱う薬剤には、大きく2つの系統があります。
| 薬剤 | 主に使われる場面 | 濃度の目安 | 作用の出方 |
|---|---|---|---|
| 過酸化水素 | 歯科医院での施術 | おおむね15〜35% | 反応が速く、短時間で進む |
| 過酸化尿素 | 自宅での施術 | 10%程度が代表的 | ゆっくり分解しながら長く働く |
ここで見落とされやすいのが、過酸化尿素はそのまま作用するわけではないという点です。口の中で分解して過酸化水素と尿素に分かれ、実際に働くのは分解して生じた過酸化水素のほうです。その量は、もとの濃度のおよそ3分の1にあたります。10%の過酸化尿素なら、生じる過酸化水素は3〜4%程度と見込まれます。
つまり「35%と10%」を並べて3.5倍の差だと読むのは正確ではありません。実際の差は10倍前後まで開きます。ただし、これは優劣の話ではありません。高濃度を短時間で使うか、低い濃度を長い時間かけて使うかという設計の違いであり、どちらも歯の内部に届かせるという目的は同じです。
短時間で進める設計はオフィスホワイトニングとは?、時間をかける設計はホームホワイトニングとは?にまとめています。製品ごとの濃度表示の読み方はホームホワイトニングのジェルとは?をご覧ください。
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります
上の「受けられない場合」に無カタラーゼ症が挙がるのも、仕組みから説明がつきます。カタラーゼは過酸化水素を分解する酵素で、これが働かないと過酸化水素が体内に留まってしまうためです。
光を当てるのは何のため?
歯科医院での施術では、薬剤を塗ったあとに専用のライトを当てることがよくあります。この光が歯を漂白していると受け取られがちですが、役割はそこではありません。
光や熱には、薬剤の分解を速める働きがあります。過酸化水素がフリーラジカルを生じる反応を後押しし、短い時間で作用を進めるための手段です。色を分解しているのはあくまで薬剤のほうで、光を当てるだけでは歯の色は変わりません。
自宅で行う方法にライトが付いていない、あるいは付いていても医院のものと出力が違うのは、そもそも設計が違うからです。時間をかけて作用させる前提なら、反応を急がせる必要がありません。
薬剤も光も、目的は同じところに向かっています。自分の歯にどの設計が合うかは、状態を見てもらえばその場で判断できます。
仕組みから決まる「変えられる色」と「変えられない色」
薬剤が届く色
飲食物やタバコによる着色、加齢にともなってエナメル質が薄くなり象牙質の色が目立ってきたもの。こうした変色は、薬剤が作用する範囲に入ります。歯そのものの色を扱う施術だからです。
薬剤では変わらない色
一方、次のようなものは薬剤では色が変わりません。
- 詰め物・被せ物・差し歯・インプラント。人工の材料であり、化学反応の対象になりません
- 金属の成分が染み出して変色した部分。着色の成分が有機物ではないためです
- 白い斑点(ホワイトスポット)。周囲が白くなることで目立ち方が変わる場合もありますが、斑点そのものが消えるわけではありません
- 薬の影響などによる強い縞模様の変色。薄くなることはあっても、均一な白さには届きにくい状態です
ここが、到達できる白さは歯の側で決まるという結論につながります。薬剤の種類を変えても、回数を重ねても、届く範囲そのものは広がりません。自分の変色がどのタイプかは歯の黄ばみを取る方法は原因で決まるで見分けられます。
人工物がある場合は、順番も大切です。先に歯の色を目標まで動かしてから、その色に合わせて人工物を作り替える。この順番を逆にすると、色が合わなくなります。
施術直後の白さがそのまま残らない理由
施術を終えた直後、鏡を見て「思ったより白い」と感じることがあります。そして数日後、少し戻ったように見える。これは効果が消えたわけではありません。
理由は2つあります。1つは、先に説明した光の反射の変化が、施術直後にもっとも強く出ること。もう1つは、施術中に歯の表面が乾燥し、一時的に白く見えていることです。唾液に触れて水分が戻ると、見え方は落ち着きます。
そのため、その回の結果を判断するのは数日たってからです。施術直後の色を基準にしてしまうと、どうしても「戻った」という感想になります。比べるべき相手は施術直後ではなく、施術を始める前の色です。
ホワイトニングの仕組みに関するよくある質問
歯を削っているのですか?
削っていません。薬剤が歯の内部の色素に化学的に作用し、色のもとになっている構造を分解します。研磨によって表面の着色を落とす清掃とは、目的も手段も異なります。
濃度が高いほうが白くなりますか?
濃度は主に反応の速さに関わります。到達できる白さの上限を決めているのは歯の側の条件のため、濃度を上げれば際限なく白くなるわけではありません。高い濃度ほどしみやすくなる傾向もあるので、状態に合わせて選ぶことになります。
なぜしみることがあるのですか?
薬剤が歯の内部へ浸透していく過程で、外からの刺激が神経に伝わりやすい状態になるためです。多くは一時的なもので、時間や間隔の調整で和らげられます。
何回やっても白くならない歯はありますか?
人工の材料でできた部分は、回数を重ねても色が変わりません。金属による変色も同様です。まずは自分の変色が薬剤の作用する範囲かどうかを確かめることが、遠回りを避ける近道になります。
まとめ|仕組みが分かると、届く範囲も分かる
ホワイトニングで起きているのは、着色のもとを化学的に分解する作用と、表面の光の反射が変わる作用の2つです。どちらも歯を削る操作ではありません。
薬剤は2系統あり、過酸化尿素は分解してもとの濃度の約3分の1にあたる過酸化水素として働きます。濃度の違いは優劣ではなく、短時間で進めるか時間をかけるかという設計の差です。光を当てるのは反応を速めるためで、光そのものが色を分解しているわけではありません。
そして仕組みから導かれる結論が1つあります。到達できる白さは歯の側で決まるということです。人工物や金属による変色は薬剤の対象外で、回数を重ねても変わりません。だからこそ、始める前に自分の変色が何によるものかを確かめておくと、目標の立て方が現実的になります。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

